早稲田大学大学院政治学研究科ジャーナリズムコース top line
これは2005年度から2009年度までのMAJESTyプログラムのアーカイブです
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MAJESTy 夏季集中講義
「 科学技術ジャーナリズム概論 」
【 MAJESTy's BOOT CAMP in オープン・キャンパス 】

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【講義概要】


[イントロダクション、クロージングセッション]
担当教員: 中村 理

科学技術ジャーナリズムには、どのような特徴と問題があるだろうか。科学と技術は、発展するにともない、公害や環境、生命倫理といった問題を生み、社会との関係を変化させてきた。その専門化された内容は、問題の本質を他者がとらえることを困難にしている。一方で、それを伝える際には正確さと分かりやすさが求められる。その情報を読み解く受け手の反応も多様である。こういった科学と技術をめぐるジャーナリズムについて考え、今後の展望を探る礎を築くため、この集中講義では、MAJESTyの各講師がそれぞれ個別の題材を用意し、論じていく。イントロダクションでは、個別の題材を踏まえながら科学技術ジャーナリズムの現在を俯瞰する。クロージングセッションでは、議論を交えながら全体の統括を行う。


「ジャーナリズムの作法」
担当教員: 谷藤 悦史

ジャーナリズムのあり方は、多様である。現代のジャーナリズムは、どのような特性を持っているのか。近代以降のジャーナリズムの展開を歴史的にたどりながら、現代ジャーナリズムの主要な特性を描き出す。次に、政治的にも、経済的にも、技術的にも大きく変化しつつあるメディア環境の中で、現代ジャーナリズムにいかなる変化が起きているかを、ニュースの政治社会学の成果を踏まえながら、ニュース生産を中心に明らかにする。


「科学ジャーナリズムは機能してきたか ~マスメディアの科学報道の現場から」
担当教員: 瀬川 至朗


科学ジャーナリズムとは何か、については様々な定義が可能であろう。ここでは、科学ジャーナリズムの代表例として、マスメディア、とくに全国紙の科学部(社によっては科学環境部、科学技術部)の活動を取り上げる。原子力や環境問題、科学技術政策などの報道で、科学記者が真の意味でのジャーナリズム機能(批判的機能と構築的機能)を果たしてきたのかについて考えてみたい。十分機能していないとすれば、構造的にどこに問題があるかを分析していく。新聞社の科学記者だった私自身の体験も紹介しつつ、講義を進める。


「編集の力を知ろう」
担当教員: 青山 聖子


情報は媒体にのって流通する。「編集」とは、どのような情報をどのような形で媒体にのせるかを、関係者と調整しながら決定していく仕事である。編集の仕方により、情報は伝わりやすくもなれば、伝わりにくくもなる。また、情報の性格も変わってくる。しかし、編集という仕事は目に見えにくく、情報の受け手がその存在を意識することはあまりない。この講義では、エコ製品の広告を題材に、科学技術情報の編集について学ぶ。受講生には事前に課題を課し、その作成と互いの批評を通して考えを深めてもらう。


「読者を意識して文章を書こう」
担当教員: 吉戸 智明


文章を書くのは簡単である。しかし、人に伝わる文章を書くことは難しい。それは、「伝える」ことと「伝わる」ことの違いに原因がある。小学生に専門用語を羅列した文章を見せても何も伝わらないし、専門家に一から説明しても意味がない。伝わる文章を書くために最も大切なのは、読み手をしっかり意識することである。この授業では、月探査衛星「かぐや」の成果を題材に、読者を意識した文章の書き方を学ぶ。受講生には事前に課題を課し、記事の作成と互いの批評を行ってもらう。


「医療と社会と、時々ジャーナリズム」
担当教員: 若杉 なおみ


近年、科学技術ジャーナリズムの中で比重を増している、医学・医療を時間軸(医学の発生から現代まで)と空間軸(DNAから公衆衛生まで)の中で捉え、社会との接点にある医学医療の種々のテーマや医療制度について学び認識を深める。人間の生命・生活と疾病と死に深く関わる医学・医療は科学技術の中でも最も身近で日常的に人々が接するものであるにも関わらず、医療というものへの理解と認識は未だ十分ではなく、歪みも生じている。このような医療と社会との関係に対してジャーナリズムが持つ役割と位置についても考察する。


「技術ジャーナリズムの世界」
担当教員: 西村 吉雄
 

技術ジャーナリズムと科学ジャーナリズムには,かなり本質的な違いがある。たとえば技術雑誌の読者は専門家である。特定の技術分野の技術者を読者にして,技術雑誌は成立している。技術ジャーナリストにも同じ分野の専門知識が要求される。それでも一般には読者のほうが記者より専門性が高い。科学ジャーナリズムでは読者は一般人を前提にしている。科学者(専門家)から一般人への科学情報の流れを,科学ジャーナリストは啓蒙的に,あるいは批判的に媒介する。この二つのジャーナリズムの違いはビジネス・モデルの違いをもたらす。市場も,働いているジャーナリストの数も,技術ジャーナリズムのほうが大きいだろう。しかし専門家向けであるために一般人には見えにくい。この技術ジャーナリズムの世界を紹介すると同時に,ウエブ進化の影響も考察する。


「SF映画は科学技術を正確に予測しうるか?」
担当教員: 谷川 建司


今から100余年前に誕生した映画とは、瞬時に他の場所へ移動し、過去や未来の異空間に我々観客を連れて行ってくれる魔法のような装置/メディアであった。その意味で、サイエンス・フィクション(SF)と呼ばれるジャンルこそが映画のメインストリームにあると言える。オゾン層の破壊と地球温暖化、環境ホルモン汚染と生殖機能の減少、遺伝子組み換え技術の功罪など、今日の科学技術分野における問題はすべてSFの形で予言されていた。本講義では特に映画『縮みゆく人間』(1957年)に焦点を絞り、実際にこの作品を鑑賞した上で、そこで暗示的に描かれた問題のその今日的な意味について考察する。


「科学技術ジャーナリズムの対象としてのIT、ツールとしてのIT」
担当教員: 小林 宏一


IT(最近はICTというようだが)のインパクトが、社会の諸領域において、その浸透度を増し続けてきたここ4半世紀、その動向は、メディア政策の視点から、あるいは、社会構成主義の文脈において科学技術ジャーナリズムの対象となってきた。その一方で、ITの革新を背景に生起しつつあるメディア界の構造変動は、多様なジャーナリズム活動のいずれもが、そうしたメディアを「舞台」にして営まれているかぎりにおいて、科学技術ジャーナリズムのあり方にも大きな影を落としているかに見受けられる。この講義では、こうした二つの視点から、科学技術ジャーナリズムが置かれている今日的境位について考えてみることにしたい。


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