J-School 新型コロナ時代の取材活動
J-School '19年春入学
中西 慧
 
 昨年(2020年)度のジャーナリズム大学院での研究は、新型コロナウイルスの感染拡大や、それに伴う緊急事態宣言の発令といった混乱のなかでの取材活動となりました。
 
 大分県・日出生台演習場で25年前から行われている在日米海兵隊の砲撃訓練「104訓練」に対する自治体・地域社会の反応を通じて、「地方自治体の防衛負担」ついて研究していました。しかし、大分県だけでなく、静岡県や沖縄県など、遠隔地への取材が不可欠だったテーマだけに、研究テーマの変更も指導教員の太田昌克先生・瀬川至朗先生と一時検討しました。
 
 また、コロナ禍で最も大変なのは、対面取材が大きく制限されることでした。特に私のテーマは、取材先が自治体の元首長や国務大臣経験者など、高齢の方々が多くなることが課題でした。若い自分は重症化のリスクが比較的低かったとはいえ、知らぬ間に取材相手に感染させてしまっては大問題になってしまいます。
 
 そのため、PCR検査を受けた上で9~12月末まで当時感染者数が少なかった大分県に長期滞在し、そこを拠点に取材を進めることで感染リスクを可能な限り抑える手段をとりました。大学院がすべての講義をオンラインで実施していたことを逆手に取った対策です。滞在費や交通費には、大学の給付奨学金を充てました。
 
 研究で最も気をつけたのは、取材相手へのアポイントメントの取り方でした。高齢の方々にとっては、若い自分たちと会うこと自体が大きな感染リスクになり得ます。そのため、普段以上に取材先を絞り込み、手紙を送り取材の趣旨を丁寧に説明した上で、取材を受けていただくことを心がけました。
 
 最小限の取材時間でより深い情報を得るため、取材の2週間前に質問事項と参考資料を送付するようにしました。これらの事項と取材中の感染対策を心がけた結果、コロナを理由に取材を断られたり、取材先のなかで感染者が出たりする事態は幸いにも避けられました。
 
 ここまで長々と書いてしまいましたが、やはり「相手に納得して取材に応えてもらうこと」と「取材相手に安心してもらうこと」というのは、コロナ禍に限らず、長期でルポを書く上で最も大切なことだと改めて感じました。
 
 現在、大学院で学ばれている皆様も大変な苦労をなさっていることでしょう。ただ、社会的状況が不安定な今であっても、きっと自分の書きたいことを書き切る手段はきっと見つかると思います。自分と周囲の感染対策に気をつけつつ、頑張ってください。
(写真は、静岡県御殿場の東富士演習場で撮影した一番お気に入りのものです)
 
「104 訓練」に参加する第12連隊第3⼤隊の兵⼠たち。2020 年10⽉25⽇、東富⼠演習場(静岡県御殿場市)で撮影(写真提供:中西さん)
 
同窓会報第12号記事
2021.5.14配信