コロナ禍での博論提出と授業運営
早稲田大学 政治経済学術院講師
J-School '09年修士課程入学、'11年博士課程入学
千葉 涼
 
 新型コロナウイルスの脅威が少しずつ拡大していた2020年3月、私は博士論文を大学に提出しました。大学事務所や印刷会社の受付時間が日を追うごとに短くなっていくのを注視しながら、ギリギリのタイミングまで仕上げの作業をしていたことを思い出します。もちろん審査のプロセスもコロナ禍の影響を受けました。2月の提出前発表会は対面でおこなうことができましたが、6月の口頭試問は前例のないオンラインでの開催となりました。こうした様々なイレギュラーに見舞われはしたものの、審査の先生方および大学事務所の皆様のご協力により、なんとか7月に博士(ジャーナリズム)の学位を取得することができました。
 
 さて、学位が取得できるような段階になってくると、大学教員としての仕事も少しずつ増えてきます。2020年度には、早稲田大学を含む3つの大学で非常勤講師として授業を受け持ちました。担当する授業はすべて遠隔授業となり、講義の収録や編集といった馴染みのない作業に四苦八苦させられました。遠隔授業については学生側にも十分な用意がないことが予想されたため、授業にアクセスできない学生ができるだけ生まれないような配慮をしなければなりません。PCは全員が持っているのだろうか、インターネット回線のデータ通信に制限はないのだろうか、といったことを考慮する必要があったのです。
 
 そして2021年度からは、早稲田大学政治経済学術院で任期付きの講師として働いています。その中で、新入生を対象とした「基礎演習」という授業を担当することとなりました。これは新入生向けに大学生活の注意点や論文の書き方などを教えるゼミ形式の授業で、この文章を書いている時点では対面で実施されています。この授業は、学生にとって大学という環境に慣れるための場であり、また人間関係を構築するための足掛かりともなります。
 
 コロナ禍のタイミングで本格的に授業を受け持つようになり、授業運営については否が応でも考えさせられています。たとえば現在500名を超える大人数の遠隔授業を担当していますが、いずれコロナ禍が終わったとしても、「大教室にすし詰めにされる」という状況への拒否感はまだしばらくは残り続けるだろうと予想しています。またPCでの作業を伴う別の遠隔授業では、大学のPCルームでの授業とは違って各受講者が自前のPCを使うことになりますが、当然そこにはスペックの格差があり、課題のデータ分析がフリーズしてしまうという連絡を受けたこともありました。一方「基礎演習」のようなゼミ形式の対面授業であっても、広めの教室が割り当てられ、向かい合っての討論という形にはしにくい状況となっています。
 
 このように問題が山積している中で、充実した学びの機会を提供するために一教員として何ができるか、これからも考えていきたいと思っています。
 
同窓会報第12号記事
2021.5.14配信