追悼、小林宏一先生
MAJESTy '06年春入学
漆原 次郎
MAJESTy(早稲田大学大学院科学技術ジャーナリスト養成プログラム)の設立時から、多くの学生がご指導・ご鞭撻を賜ってきた小林宏一先生が、2019年11月15日に永眠されました。つつしんでご冥福をお祈りします。
MAJESTyで学んでいたころのことをふりかえると、つねに小林先生は、あたたかな心で私たち学生を見守り、学生と接してくださっていました。第1期の学生たちは初めてづくしの学びのなか、さまざまな悩みごとや困りごとを抱きました。そんなときは決まって「小林先生に相談してみよう」となり、先生がおられた1号館の屋根裏部屋へと向かうのでした。
手元に、「OJWを振り返って」という小林先生のレジュメがのこっています。OJWは2006年に、正規の授業とはべつに小林先生に7回にわたり開いていただいた「Online Journalism Workshop」のことです。まだ、インターネットにおけるソーシャルネットワークとしての役割がいまほど大きくなかった当時から、小林先生は「発信側編集と受信側編集の融合」や、ニュースなどに対する「編集の編集」が起きはじめていることを強調されていました。
オンライン・ジャーナリズム・ワークショップでの小林先生
レジュメの最後のほうで、先生はこう綴っておられます。
・ブログ活動は、ジャーナリストを「謙虚」にする(相互批判性)
・「すっきり感」、「潔さ」がともすれば薄れる日本のnetsphere
これらは、長年にわたりメディアのあり方をご覧になってこられた小林先生の「望み」と「憂い」だったのではないかと、いまあらためて思います。
2013年には、同窓会一堂でご退任のお祝いをさせていただきました。同窓会報にも「リタイヤ目前に考えていること」とのお題でご寄稿をいただきました。小林先生は原稿を、つぎの1文で締めくくっておられます。
「昨今のSNSによってもたらされたコミュニケーション行動の『流行現象』をどう考えるべきか――メディア論は新たな挑戦を受けているかに思われます」
私ども学生は、さまざまな場面で、“さまざまな小林先生”に頼らせていただきました。けれども、小林先生のまなざしの先にあるものは、ずっと変わらなかったのだということを、いまあらためて実感します。
2012年9月1日、群馬県・嬬恋高原の小林先生別宅にて。ご所蔵のラジオをチューニングされているところ。修了生・学生7人が小林先生を訪ね、夜遅くまで先生のお話を聞き、語りあった
小林先生。メディアのこと、それ以外のこと、さまざまなことを学ばせていただきました。ありがとうございました。小林先生と出会うことのできた学生のだれもが、先生に感謝の気持ちをもっていることと思います。
どうか、安らかにお休みください。
同窓会報第11号記事
2020.3.20配信