制定の趣旨
建学以来、早稲田大学は「学問の独立」という建学の理念のもと、時代に迎合せず、野にあっても進取の精神で理想を追求する多数の優れた人材を、言論、ジャーナリズムの世界に送り出してきました。
先人たちの伝統を受け継ぎ、この時代の大きな転換期に自由な言論の環境を作り出すこと、言論の場で高い理想を掲げて公正な論戦を展開する人材を輩出することは、時代を超えた本学の使命であり、責務でもあります。
このような趣旨にのっとり「石橋湛山記念 早稲田ジャーナリズム大賞」を創設しました。
本賞は広く社会文化と公共の利益に貢献したジャーナリスト個人の活動を発掘し、顕彰することにより、社会的使命・責任を自覚した言論人の育成と、自由かつ開かれた言論環境の形成への寄与を目的としています。
賞の名称には、ジャーナリスト、エコノミスト、政治家、また本学出身の初の首相として活躍した石橋湛山の名を冠しました。時代の流れにおもねることなく、自由主義に基づく高い理想を掲げ、独立不羈の精神で優れた言論活動を展開した湛山は、まさに本学の建学の理念を体現した言論人であるといえます。
石橋湛山 (1884-1973)
東京・芝二本榎に生まれ、幼年時代は山梨県の寺で育ちました。甲府中学を出て早稲田大学に入学、哲学を学びわが国にプラグマティズムをもたらした田中王堂に出会います。卒業後ジャーナリストを志して東京毎日新聞に入りますが間もなく退社し、東洋経済新報社に転じます。その後の幅広い評論活動は実に精力的で、積極財政論、反戦反軍思想、小日本主義思想をおのれの立場とし”野に石橋あり”の声は常に高いものでした。ジャーナリストとしても、またエコノミストとしても卓抜な存在だったといえます。
賞の概要
以下の3部門の賞が設けられています。
公共奉仕部門
国際化・情報化が進展する社会の現実を見据え、すぐれて高度な公共性を帯びた全地球的レベルの課題、たとえば環境、福祉、人権、教育といったテーマに関し、問題発掘的、政策提言的なジャーナリズム活動を対象とする。本賞の基本理念に照らして一貫した批判精神に支えられ、日本の社会におけるあらゆる官僚主義を排するという明確な視点と問題意識に立脚したものが望まれる。
この部門の審査における選考基準としては、公共性、国際性、在野性を基軸とし、新奇性、批判性、提言性、持続性などの諸点も考慮される。
草の根民主主義部門
地域社会・地方自治が直接的にも、間接的にも、国の内外における政治的、経済的、文化的なシステムと密接に連関しているとの認識に立ち、コミュニティの深部もしくは周縁に生起しつつある普遍的な課題を発見・発掘・提示するジャーナリズム活動を対象とする。
審査における選考基準は、公共奉仕部門で述べた基本的方向に沿って行なわれるが、この部門では特に地域共生性、地域創造性が求められる。
文化貢献部門
社会における文化的活力を象徴するユニークな作品、及び各地域において継承され、再創造されている伝統文化を積極的に評価し、社会に発信することを目指したジャーナリズム活動を対象とする。
審査における選考基準は、上記二部門と基本的には同じであるが、この部門ではとりわけ当該活動の文化に対する創造性、啓発性及び民俗に根ざした大衆性などの諸点も考慮する。